1999年6月10日

Access

 深夜のノア本部。そこで彼は戦っていた。  強い…… なんという強さだ……。  キースの背に寒いものが走った。もはや敗北は目前。しかし、彼は逃げるこ とはできなかった。  目の前には勝利を確信して笑いを浮かべる男がいた。その男、ウォンは眼鏡 を右の人指し指で軽く押し上げ、笑みを浮かべたまま――しかし冷たく――キー スに向かって言った。 「もうおしまいですか、キースさま? もう少し楽しませていただけるかと思っ ていたのですがねぇ」 「くっ…… まだだ! まだ終わらんよ!」  ウォンはキースの全身から、まだ消えぬエネルギーを感じた。いったい何が 彼をここまでさせるのか。 「きみの力は見切ったよ……」 「ほぅ。では、お手並み拝見と参りましょうか」  やはり、ウォンの笑みは崩れない。  キースはゆっくりと、右手を挙げた。  そのキースの右手がデッキからカードを1枚引く。手札に来たカードを見て、 キースは次の行動にうつった。 「よし、【智子】と【志保】を消耗させてコストをふたつ払って【スカウト】 を使うぞ」  キースはデッキを手に取り、その中から1枚のカードを抜き取った。デッキ をシャッフルし、元の位置に戻す。 「今度はリーダーの【琴音】ちゃんを消耗させて、スカウトしてきた【応急手 当】だ! これで【琴音】ちゃん自身の気力を4点回復……」 「あ、その【応急手当】を【ガセネタ】しましょう」 「ぐはぁっ!」  キースは血を吐きながら後ろに倒れた。 「おや、もうそちらはおしまいですか? ではこちらのターンですね。【マル チ】でバトルを宣言します。そちらは全員消耗していますから、リーダーの 【琴音】で受けるしかありませんね。では種目は【熱湯風呂】。あ、もちろん マルチの特殊能力[応援]を使って、《根性》に+1しますからね。……【琴 音】の気力が0になりましたねぇ。これでわたしの勝ちですね」  キースがゆっくりと起き上がってきた。 「くうう…… もう一回だ! もう一回勝負だ!」 「やれやれ。今のキースさまの腕前では、わたしの『マルチちゃん萌え萌え熱 湯風呂デッキ』には勝てませんよ」 「何を言うか。今度こそ『琴音ちゃん超能力ちくちくデッキ』の力を見せてや る!」  こうして、今日もノアの夜は平和に過ぎていくのであった。 めでたしめでたし

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.m-station.org/bin/mst-tb.mt/40

コメントする