2000年5月 2日

第3話「登場!! 神か悪魔か真トゥハートロボ!!」B

=================================== ※この作品は、リーフ製コンピューターゲーム「To Heart」およびバンダイビ ジュアル製オリジナルビデオアニメ「真ゲッターロボ」のパロディです ===================================  浩之と志保は、追ってくるメイドロボ・インベーダーから逃げつつ、表へと 向かっていた。  ショットガンの弾も尽き、今はただ走るのみであった。 「ヒロ! もう少し!」  出口が見える。浩之は携帯用の手榴弾を取り出すと、ピンを抜いて奥に向か って投げつけた。逃げるふたりの背後で爆発が起こる。  出口から出たふたりが見たものは、苦戦するトゥハート3の姿であった。 「あかり! おれたちを乗せろ!」  コミュニケーターに向かって、浩之が叫ぶ。 『浩之ちゃん! わ、わかった! オープン・ハートッ!』  モニターに浩之と志保の姿を確認したあかりは、パネルを操作して機体に分 離指示を出す。  トゥハート3が分離し、3体のハートマシンとなった。  イーグル号とジャガー号が浩之たちの前に着陸し、あかりのベアー号はイン ベーダーを牽制する。  ハートマシンに乗り込んだ浩之と志保は、すぐにマシンを発進させた。 「よし、いくぜ!」 「浩之ちゃん、志保、あのインベーダー、すっごく素早いよ!」 「スピードならあたしにまかせて! チェンジ! トゥハート2!」  志保の掛け声と共に、ジャガー号の後ろにベアー号が、その後ろにイーグル 号が合体する。  側面からはドリルがついた右腕と、クローがついた左腕が伸び、後方からは 両足が伸びる。  ジャガー号の機首が展開し、頭部に変形した。 「ドリル・パーンチッ!」  合体を完了したトゥハート2は、右腕のドリルを高速回転させながらインベー ダーに空中から突進した。  インベーダーはそれをかわすが、ドリルがわずかにかする。  やや距離を取ったインベーダーが攻撃に転じる。身体中から触手をのばし、 トゥハート2を襲う。 「トゥハート・ビジョン!」  その触手が届こうかとする瞬間、トゥハート2の姿が消え、その攻撃を避け た。  トゥハートビジョンは、高速移動をすることで残像をつくり出し、分身した かのように見せる防御技である。  インベーダーの後ろを取ったトゥハート2は、ドリルを高速回転させ、空気 の渦をつくり出す。  その渦をインベーダーに向かって撃ちだした。 「ドリル・ストームッ!」  渦はインベーダーを吹き飛ばす。インベーダーは後方にあった岩に叩きつけ られた。  止めを刺すべく、志保はドリルを回転させながら、トゥハート2を突進させ る。 「いけぇーーーーーーっ!」  トゥハート2がドリルを繰り出す。  その瞬間、トゥハート2のドリルが打ち砕いたのは、インベーダーが叩きつ けられた岩だけであった。 「なっ!」 「志保! 後ろだ!」 「えっ!」  トゥハート2が振り向いた瞬間、首に触手が巻きついた。  続いて両腕・両脚、さらに胴体までからめ捕られる。 「し、しまった!」  身動きがとれなくなったトゥハート2を、インベーダーの触手が締め上げる。  トゥハート2のボディが、ギシギシと音をたてはじめた。 「な、なんて力なの!」  モニターに映る情報に、あかりが声を上げる。  スピードに特化したため、やや力が弱いトゥハート2はもとより、もっとも 力強いトゥハート3でもかなわないような力だった。 「志保! なんとか分離できないのか!」 「だめ! コントロールがきかない! ……きゃっ!」  志保が操作していたパネルが、小さな爆発を起こした。  いくつかの回路がショートを起こし、モーターが焼けはじめ、赤いアラート サインが少しずつ増えていく。  そして、ついにコクピットを取り囲むモニタースクリーンパネルにひびが入 りはじめた。 「これ以上は機体が持たないよ!」  あかりの悲鳴が響く。 「冗談じゃねぇぞ。こんなところで……」  時々途切れながらもスクリーンに映っているインベーダーをにらみつけ、浩 之が吠える。 「こんなところで…… やられてたまるかあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」 『……浩之さん……』  暗く広いとある部屋に、それは設置されていた。  巨大な影があかりと雅史から奪い去っていった、あのカプセルである。  どくん。  少しずつ、カプセルから発せられる緑色の輝きが明るくなってくる。 『……浩之さん……』  カプセルの中の人影が、少し動いた。  どくん。  まばゆいばかりに輝くカプセルが、震えはじめる。 『浩之さん…… 浩之さん…… 浩之さん!』  突如、カプセルが砕け散った。  その中から、ひとりの少女が飛び出す。  緑のショートヘア。耳につけられたカバー。白い水着のような薄手のスーツ。  その少女は、部屋の中央に立つと、大きな声で叫んだ。 「チェーーーーーンジ! 真! トゥハート・ワーーーーーーン!」  足元の床にひびが入る。ひびは大きく盛り上がり、その下から巨大な影が姿 をあらわした。  それにつられるかのように、天井も空に吹き飛ぶ。  少女を頭の上に乗せ、巨大な影は、その姿をあらわした。  トゥハート2が膝をついた。 「これまでか……」  トゥハートチームに絶望が襲いかかろうとしたその時。研究所の別棟のうち ひとつが、突如、緑色の光と共に空へと吹き飛んだ。 「なに!」  その場にあらわれたのは、巨大な人影。  あかりはその人影に見覚えがあった。 「あれは! 雅史ちゃんに怪我を負わせた……!」  その影は、インベーダーの方をギンと睨む。 「トゥハート・ビーーーーーーーームッ!」  少女の声が響くと、その影の額から緑色の光線が発射された。  その光線に包まれたインベーダーは、悲鳴を上げる間もなく消滅した。  トゥハート2は、全身から煙を吹き出しつつも、インベーダーの締め上げか ら開放された。 「あの声はまさか……。しかし、あれはいったい何なんだ?」  モニターに映るその影を見ながら、浩之はつぶやく。  そして、志保もまた信じられないものを見るようにつぶやいた。 「まさか、橋本博士は、トゥハートロボGだけではなく、こいつまでも完成さ せていたというの……」 「……志保、おまえ、こいつが何か知っているのか? こいつはいったい何者 なんだ! 志保! おれのわかるように説明しろ!」  その浩之の問いに答えたのは、志保ではなかった。 『それほどまでに知りたいのならば、教えてやろう』 「橋本!」  どこからか橋本の声が響いてきた。  浩之は必死に探すが、どこにも橋本の姿はない。 「てめぇ、どこに隠れてやがる!」 『これこそが、最強・最後のトゥハートロボ!』  昇りはじめた朝日が、その影を少しずつ照らしてゆく。  浩之たちの前に、その巨大な影が真の姿をあらわす。 『その名も、《真トゥハートロボ》よ!』 「真トゥハートロボだとぉ!」  トゥハートロボよりもふたまわりは大きいその巨大ロボットの姿に、浩之た ちは圧倒されていた。  そのとき、別の声がコクピットにあるスピーカーから聞こえてきた。 『うえぇぇぇぇぇん! 高くて怖いですぅ! 降りられませぇぇぇぇぇん!』  浩之たちは、思わずコクピットの中でずっこけた。 「この声、間違いない。マルチだな!」  モニターに映し出されたその姿。真トゥハートロボの頭の上にいるその少女 は、間違いなくマルチであった。 『ぶえぇぇぇぇぇん! ひろゆきさ~ん! 助けてくださあぁぁぁぁぁい!』  朝日が差し込む中、マルチの泣き声と、浩之たちの笑い声が、その場に響い ていた。 ※次回予告 橋本の乱を阻止することはできた だが、戦いはまだ終わってはいなかった 束の間の休息 新トゥハートチームの特訓 新たな戦いが間近に迫る! 次回「真(チェンジ!!)トゥハートロボ」 「インターミッション」 お楽しみに!

第3話「登場!! 神か悪魔か真トゥハートロボ!!」A

「トゥハートッ・ウィーーーーーーーングッ!!」  トゥハート1の背中にマントがひるがえる。  浩之は橋本とインベーダーを追って、トゥハート1を飛ばした。  前方に橋本が乗るドラゴン号とインベーダーが戦っている様子が見えた。  インベーダーの触手がドラゴン号の機体をかすめる。ドラゴン号は煙を吹い て、高度を下げ始めた。 「博士!」 「浩之ちゃん! 博士が!」  悲鳴を上げる志保とあかり。  橋本を追撃しようとするインベーダーに向かって、浩之は叫んだ。 「待ちやがれ! そいつはおれの獲物だぁ!」 =================================== 真(チェンジ!!)トゥハートロボ 第3話「登場!! 神か悪魔か真トゥハートロボ!!」 ※この作品は、リーフ製コンピューターゲーム「To Heart」およびバンダイビ ジュアル製オリジナルビデオアニメ「真ゲッターロボ」のパロディです ===================================  トゥハート1の肩からトマホークが飛び出す。それを右手でつかんだトゥハー ト1が、空中で大きく振りかぶった。 「トマホォォォォォォォォォクッ! ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥメランッ!」  トゥハート1が投げつけたトマホークが、インベーダーをまっぷたつに切り 裂く。 「ギィヤアアアアアアアッ!」 「トゥハートッ・ビィィィィィィィィィィィィィィムッ!」  インベーダーの残骸が、ビームで焼かれる。  舞い戻ってきたトマホークを、トゥハート1が受け止めた。 「浩之ちゃん、やったあ!」 「さあっすがヒロ。カンは鈍っちゃいないようね」 「ふん…… いくぞ!」  インベーダーに代わり、トゥハート1が降下を開始する。  廃墟となっている研究所前には、不時着したドラゴン号の姿があった。キャ ノピーは開き、機体の中に人影は無い。 「研究所の中に逃げ込んだか……。オープン・ハートッ!」  浩之はトゥハートロボを分離させると、イーグル号を着陸させた。続いて志 保のジャガー号とあかりのベアー号が着陸する。  ハッチを開いた浩之は、ショットガンを片手にイーグル号から飛び下りた。 「浩之ちゃん、どうするつもりなの!」  ベアー号から姿をあらわしたあかりの声が飛んだ。 「決まってんだろ! 橋本を追いかける!」 「これ以上、事情も知らずに深入りするのは危険だよ!」  浩之にこれ以上無理をさせたくないあかりは、必死に止める。  だが、浩之にその思いは届かない。 「事情なんてどうだっていい! おれは復讐が果たせればそれでいいんだ!」 「止めてもムダみたいね」  志保もまた、ジャガー号から飛び下りる。  銃に入っている弾を確かめ、ニッと浩之に笑いかけた。 「あたしも行くわ。あんたひとりじゃ、何しでかすことやら」 「……勝手にしろ」  浩之は志保に背を向け、研究所跡の入り口に向かって歩き始めた。 「浩之ちゃん! 志保!」 「あかりはここでハートマシンを守っていろ。1時間で戻る!」  研究所跡に入っていく浩之と志保を、あかりは複雑な表情で見送った。  真っ暗な中をハンドライトの明かりを頼りに、浩之と志保は進んでいく。  中は荒れ果ててはいたものの、浩之の記憶にある研究所そのままであった。 「いったい、なんでまたこんなことになったんだ?」 「そっか、ヒロは知らなかったのよね」 「いや、事故があったのは知っている。だが、原因はなんなんだ?」  コツコツと、ふたりの足音が響く。  浩之の質問に、うつむいて答える志保。暗さもあって浩之にその表情はわか らない。 「原因はわかってないわ。橋本博士が死んで、あんたが捕まって。そのあとす ぐに起きた謎の爆発事故」  志保は、思い出すように語り続ける。 「そのせいで研究中だった『トゥハートロボG』の試作品もデータも、すべて パー。結局、新型トゥハートロボの開発は真っ白の状態から再スタートになっ た。だけど……」 「橋本は生きていて、しかもトゥハートロボGを完成させて、量産までしてい たってか?」  その言葉に、志保は苦笑する。  世界有数を誇るKSSの情報収集システムでさえ、この橋本の反乱はつかめ ていなかった。それも、準備がこの橋本研究所跡で行われていたのである。ま さに灯台もと暗しであった。  浩之と志保は、すでに壊れているドアをくぐり、ひとつの部屋に入る。 「事故の後、しばらくはトゥハートエネルギーが放出されていたからね。デー タのたぐいも何も残っていなかったはずだし、後片付けは後回しにしたんでし ょ。偉いさんの考えそうなことよ」 「で、こうして誰もいないところができたってわけか」  次の瞬間、浩之と志保は向き合う。  浩之の銃は志保の額を、志保の銃は浩之の額を狙っていた。 「……約束したと思ったけど?」 「おめぇがおれとの約束を守ったことがあったか? 軽いお返しだ」 「……今のヒロには、本当に何を言ってもムダみたいね。結局、こうして銃で 語り合うしかないのかしら?」  浩之の目に志保が映り、志保の目に浩之が映る。  引き金にかけた指に、少しずつ力がこもっていく。  パン! パン! パン!  浩之の銃と志保の銃から、同時に銃声が鳴り響いた。「同じ目標」に向かっ て!  ギイィィィィィ……  暗がりから何者かが姿をあらわす。  それは、壊れたメイドロボであった。動くはずが無いそれは、ゆっくりと歩 いていた。  浩之と志保の銃弾を受けた胸から煙が上がっている。そして、その上にある 首は、トカゲのようなインベーダーのものであった。 「ちっ!」  志保が再び発砲する。弾はそのトカゲの頭を貫通するが、それはそのまま歩 いてくる。 「志保! どけ!」  浩之はショットガンを構え、発射した。その弾はメイドロボの上半身と共に インベーダーを吹き飛ばす。  しかし、暗闇の中からまた2体3体と、新たなインベーダーが乗ったメイド ロボがあらわれる。 「くそっ!」 「ヒロ、ここは逃げましょ!」  浩之と志保は部屋を飛び出し、出口に向かって駆けだした。後ろからメイド ロボたちが追いかけてくる。  その逃走の途中で、浩之が腕に着けていたコミュニケーターが鳴りはじめた。 「どうした、あかり!」 『浩之ちゃん、インベーダーが! 新しいインベーダーがあらわれたよ!』 「なんだと!」  研究所の外では、あかりの乗るベアー号が巨大なトカゲ――新たなインベー ダー――と戦っていた。必死に操縦するものの、イーグル号とジャガー号の自 動操縦を誘導しながらの戦闘では、限界がある。 「チェンジ! トゥハート3!」  あかりの掛け声と共に、ハートマシンが合体を開始した。  ジャガー号の側面にキャラピラが展開し、イーグル号がその上面後方に突き 刺さるように垂直に合体する。  ベアー号もまた、イーグル号に納まるように垂直に合体した。  蛇腹状の腕が伸び、箱状の頭部が展開する。  戦車の上に人の上半身を乗せたようなその姿こそ、トゥハート3であった。  本来は水中戦用の形態であるが、こうして地上で使用することもできる。 「行くよ!」  合体を完了したトゥハート3がキャタピラをうならせながらインベーダーに 向かって突進する。  伸びた両腕がインベーダーをつかんだ。 「必殺! 大雪山おろし!」  トゥハート3のその力で、インベーダーを上空へと回転させながら投げ上げ る。そして、インベーダーはこのまま回転しながら地面に叩きつけられるのだ。  この大技は、トゥハート3の正規パイロットである雅史が、高校時代に授業 で習った柔道を基に考え出したものであった。トゥハート3の力を利用した、 スポーツマンの雅史らしい技と言える。  サブパイロットであるあかりは、雅史からこの技を伝授してもらっていた。  しかし、インベーダーは地面に激突する瞬間に体制を立て直し、着地した。 そして、そのままトゥハート3に向かって跳躍する。 「トゥハートミサイル!」  トゥハート3の肩からミサイルが発射されるが、インベーダーはそれも空中 でかわす。  インベーダーとトゥハート3がすれ違った時、トゥハート3の右腕が肩から 吹き飛ばされた。  その衝撃がコクピットに走る。 「きゃああ!」