1999年1月17日

===================================== 駅 by Master =====================================  駅のホームで、あたしは泣いていた。  目の前には大きなスーツケースを持ったお姉ちゃん。 「もう、いつまでも泣いていちゃダメよ」 「でも、でも……」  涙がとまらない。あとからあとからあふれてくる。  今までずっと一緒にいたお姉ちゃんが、遠くに行ってしまう。とてもさみしかっ た。 「だいじょうぶよ。もう会えないわけじゃないし。手紙、書くから、ね」 「う、うん、あたしも……。あたしもきっと書く!」  お姉ちゃんはあたしをそっと抱きしめてくれた。肩が小さく震えている。 お姉ちゃんも、泣いてるの?  列車はお姉ちゃんを乗せて、ゆっくりと走り出した。 どうして、ひとはひとを求めるの? ひととひとが出会えば、 傷つけあうことがわかっているのに。 それはあたしにもわからないな。 でもね、その答えを知ってしまったら、 とてもつまらないと思うけどな。 それでも、ぼくは知りたいんだ。 ひとを傷つける力を持ったぼくが ひとを求めてもいいのかな? どうしてだろう? あのひと、最後にあたしの名前を呼んだ? これ以上は危険だ! ここから先はおれに任せろ! あたしが行かなきゃ……。 あたしが行かなきゃダメなの! あたしがわからないの? きみ、誰だい? ぼくはきみなんか知らないよ。 あなたはすでに彼女に会っているのですよ。 別の姿でしたがね。 まさか……。 まさか、あのひとが! 「いやあああああああああああああああああああああああああああああああっ!」  あたしは目を覚ました。  よく覚えていないけど、なんだかいやな夢を見たような気がする。 ……ンディー…… ……けて…… ……ンディー…… 「誰……? この声……。お姉ちゃん!?」 ……ンディー…… ……けて…… ……ンディー…… 「お姉ちゃん! どうしたの!? お姉ちゃん!!」 ウォ…… 秘密……ノア…… ソニ…… 「何? 何のことなの? お姉ちゃん!!」 もう…… ごめ…… さよな…… 「お姉ちゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」  それから、お姉ちゃんのテレパシーも手紙も、届くかなくなった。  あの駅に、あたしは立っている。  あの時はお姉ちゃんが旅立ったけど、今度はあたしの番。  もう泣かない。お姉ちゃんを見つけるまで、それまでは泣かないって決めたの。 「風よ……。あたしに力を!」  吹きすさぶ風の中、少女は旅立った。  これから先の運命も知らず。

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